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| 掲載誌 | 年月 | 論題 | 内容 | |
| 2005年5月 笠間書院 | 『接続する中也』 | 中也詩をテクストとして従来の作品論から切断する、あるいは非文学領域と接続させる。中也詩とそれをめぐる様々な事象（昭和初期の現象学・社会学・言語学）との接続、切断を繰り返し「文」学の内包する自己矛盾、あるいは「文学」学ともいうべき「文学」そのものへの切開を試みる。中也詩を通して「文学」の制度性の内部にまで接続の触手をのばしていく試みにより、中也詩の政治性・社会性を明らかにした。 | |
| 2009年6月 青弓社 | 『スポーツする文学』 | 日比嘉高、日高佳紀との共同編集。スポーツをめぐる言説を文学テキストの分析による手法を活かして、社会学や歴史学とは異なったアプローチをし、文学の近接領域に対する「対話」の可能性を模索した論集。大正から昭和初期、モダニズムと大衆文化の時代。 新聞や雑誌、ラジオ、レコードなどのメディアを介して、文学／レトリックとスポーツ／身体が交錯した諸相をたどり、「文学とスポーツのアリーナ」を物語や表象などから多面的に分析した。 | |
| 2012年6月 ゆまに書房 | 『コレクションモダン都市文化80 出版文化』 | モダニズム期の叢書としての出版形態の調査及び現在稀覯本となっているモダニズム資料である「海戦」「アルキペンコ」「百貨店・白木屋」「変態性欲考」を掲載し、その改題、及びモダニズム期の叢書出版に対する概説と小論、及び出版史年表を掲載した。 |
| 掲載誌 | 年月 | 論題 | 内容 | |
 | 2018年3月 『立教大学日本文学 １１９号 |
「倒錯」と「顛倒」の連鎖 ――笙野頼子「二百回忌」をめぐって | 笙野頼子の「二百回忌」を、?倒の連鎖というキーワードで読み進めることによって、テクストの構造を明らかにするとともに、マジックリアリズムにおける「リアル」という側面を同時代表象との関連で考えようとしたもの。 | |
| 2018年3月 『武蔵野大学日本文学研究所紀要』 ５号 | 移動(スリップ)する時空 あるいは 残された断片 ――笙野頼子『タイムスリプコンビナート』論― | 笙野頼子の「タイムスリップ痕ブナート」を単なる時代表象の反映ではなく、記憶と記録をめぐるポストモダン的な様相を逆手にとった実験的な小説であったことを明らかにしようとした試み。 | |
| 2018年3月 『明星大学紀要 人文学部 ５４号 | 逃走あるいは溶解する境界 ――笙野頼子「なにもしていない」をめぐって | 笙野頼子の「なにもしていない」を、天皇のテレビ報道と語り手の伊勢への帰郷という出来事を重ねた、天皇と家族制度、あるいは、性と接触、女性の社会的位置をめぐる物語と捉え、そのテクストの力学を明らかにしたもの。 | |
| 2018年1月 『東京学芸大学紀要 人文社会科学系Ⅰ』 ６９号 | 言葉の「逃走」と言葉からの「逃走」 ――中上健次「十九歳の地図」をめぐって | 中上健次の「十九歳の地図」を、新聞奨学生という問題から同時代の諸相に置き直してみると同時に、「移動」と「主体」という問題に即してテクストを捉え直し、中上がその文学的出発点において何を措定していたのかを探究しようとする試み。 | |
| 2017年4月 『三島由紀夫研究』 １７号 | 〈ネタ〉と〈ベタ〉の往還 ――三島のスポーツ言説文法という視座 | 三島由紀夫のスポーツや身体観について、主として東京オリンピックにおける諸氏との言説空間に置き直してみることにより、その独特の諸相を検討し、その観点から「太陽と鉄」を読み直す端緒を見出そうとしたもの。 | |
| 2017年1月 『立教大学日本文学 １１７号 | 「記憶」と「思い出」の間に ――青山七恵「ひとり日和」をめぐって | 青山七恵の「ひとり日和」を、上京という大きな移動、鉄道による日々の移動と母親による中国への移動。さらには、移動しない同居者といった「移動」をテーマに読み解き、アイデンティティの構築と「移動」という観点から小説の読み直しをせまったもの。 | |
 | 2016年9月 『昭和文学研究』 第73集 | クラインは自ら壺を割るか ――吉本隆明『固有時との対話』を読む | 吉本隆明の第一詩集である「固有時との対話」を、「固有時」の理解と「建築」の文脈、散文詩的構造の需要という枠組みで見直すことにより、吉本の出発点として如何なる読みが可能となるか、その可能性を模索したもの。 | |
 | 2016年8月 『立教大学日本学研究所研究年報』 第14・15号 | 「見えないもの」が見せてくれるもの ――長嶋有「猛スピードで母は」論 | 長嶋有「猛スピードで母は」を対象に、当時の北海道のテレビ需要の問題や、小学生の「鍵っ子」問題を反映した物語として、作品を読み返し、そして三回に渡る「霧」の表象によって同時代的な情報をたくみに取り込みながらも、ある種の普遍的な枠組みを提示した物語であることを論じたもの。 | |
 | 2016年3月 『明星大学研究紀要 人文学』 ５２号 | 視線の交錯あるいは視線の占有 ――青山七恵「窓の灯」をめぐって | 青山七恵「窓の灯」をもとに、みることの政治性をめぐる問題、視覚至上主義的な近代世界の諸問題を考察するきっかけとして、テクストを読み直そうとする試み。 | |
 | 2016年3月 『武蔵野大学日本文学研究所紀要』 ３号 | 他者の居ないセカイ あるいは永遠に円環する物語 ――松浦寿輝「花腐し」をめぐって | 松浦寿輝「花腐し」を、その循環を軸とした構造性を明らかにした上で、同時代の大久保表象、合法ドラックの問題、黎明期のネット情報等を鑑みて読解しようとする試み。 | |
 | 2016年1月 『東京学芸大学紀要 人文社会学系Ⅰ』 第67集 | 宛先の無い「告白」が誤配される時 ――絲山秋子「沖で待つ」をめぐって | 絲山秋子「沖で待つ」を、時代の痕跡の記録として読むこと、さらには記憶・記録をめぐる先行論と接続することにより、従来の叙情的な読解とは異なる位相のテクストとして再評価することを目指したもの。 | |
 | 2015年3月 『明星大学研究紀要』 23号 | 因果の呪縛 ――丸谷才一「樹影譚」論 | 「樹影譚」という小説の魅力を、従来論じられるような私小説への批判的言説という作家論から、近代哲学の根本のひとつといってもよい因果論への抵抗という主題をもった野心的な小説であると捉えなおそうとする試み。 | |
 | 2015年2月 『長野県短期大学紀要』 69号 | 記号文化に外部はあり得たのか ――藤原智美「運転士」論 | 藤原智美の「運転士」を８０年代的な気記号論の文脈を意識しながら、その外部への闘争の不可能性を描こうとしたものとして捉え、さらに精神分析な枠組みを意識して読み替えようとしたもの。 | |
 | 2015年1月 『立教大学日本文学』 111号 | 錯綜する境界線 ――多和田葉子「ペルソナ」論 | 多和田葉子の「ペルソナ」に関し、従来指摘されている国民国家的な境界線に加え、ジェンダーや異常／正常という境界線を可視化して読むことの重要性を論じたもの。 | |
 | 2014年2月 『長野県短期大学紀要』 68号』 | 欲望する家族という悲喜劇 ――小島信夫『馬』論 | 小島信夫の「馬」を朝鮮の問題や戦後のニューファミリーの問題など時代の痕跡を強くとどめるテクストとして読み直し、さらに、その構造性を整理、分析したもの。 | |
 | 2014年1月 『立教大学日本文学』 111号 | 言葉・アイデンティティ・他者 ――赤染晶子「乙女の密告」論 | 赤染晶子の「乙女の密告」を記号という問題の枠組みを利用しながら、自分と所属する場所や位置とアイデンティティの相克をめぐる物語として読み直し、「女子大生」と「アンネ」という選評で批判された両者の比喩関係を再評価しようとするもの。。 | |
 | 2013年3月 『明星大学研究紀要 人文学部』 49号 | 再帰する偶然性 ――安岡章太郎『ガラスの靴』論 | 安岡章太郎の「ガラスの靴」をめぐって、同時代の電話回線のインフラ機能、さらには、制度化されつつあった夏期休暇制度の状況を踏まえて、当時の政治的文脈を浮かび上がらせようとする試み。 | |
 | 2012年3月 『立教大学 日本学研究所年報』 ９号 | 政治と読むこと或いは人物に寄り添うということ ――楊逸『ワンちゃん』論 | 社会・政治的状況または作者の言葉の問題を考えることに終始してきた、楊逸『ワンちゃん』をあえて、構造的な読み方に徹底して読解することによって、作家ではなく小説自体が持つ「政治性」を明らかに仕様とする試み。 | |
 | 2011年8月 『中原中也研究』 第16号 | シンポジウム アウトサイダーの〈道化／ファルス〉 パネリスト 疋田雅昭・権田浩美 司会 中原豊題 | 中原中也の道化調の詩歌について。主として安吾との比較によって中也の特質を考えてみました。前年のシンポジウムの記録です。 | |
 | 2010年3月 『日本現代詩歌研究』 9号 | 絶え間ない希求と断絶の間に ――コミュニケーション論としての尾形亀之助の可能性 | 尾形亀之助の詩は、従来日常の生活を切り取っただけの意味が明瞭なだけの断片だと解釈されざる得ない研究状況であったが、本論ではその詩的可能性をコミュニケーション論として再考している。具体的には、詩人と読者の間にある意味伝達は失効させず、情緒や詩的効果を失効させることにより、ある種のコミュニケーションの断絶を逆説的に伝達しようとした亀之助の詩業を明らかにした。 | |
| 2009年4月 『戦後詩のポエティクス』 世界思想社』 | 吉本隆明 ――思索と詩作の間 | 吉本の批評の根底には、詩人としての活動があったことを再度確認した上で、その営みの形式的な面において富永太郎の重要性を実証的な影響関係を基に論じたもの。さらに、初期詩篇の具体的な読解の可能性も試みた。 | |
 | 2007年10月 『国文学 解釈と教材の研究』 | 「声」と「詩」の闘争 ――中也詩の更なる「接続」にむけて | 前年に出版した『接続する中也』に対する反響をまとめ、いただいた批判に対し答えた上で、前著では不可能であった新たな「接続」の枠組み（戦中の時事的な問題など）について論じ、今後の論の方向性を示唆したもの。 | |
 | 2007年7月 『立教大学 日本文学』 | 欲望する妻たちあるいは欲望される子だもたち ――多和田葉子「犬婿入り」をめぐって | 多和田の作品は、難解な作品世界を作家の自意識の問題を通じてどう読解するかが問われていた。しかし、本論文では、１９６０年代の様々な社会事象と接続し、都市伝説の形成にかかわる人々を民俗学的観点からとらえなおした作品として読み直し、多和田の作品の社会性を再考しようとしたもの。 | |
| 2006年7月 『立教大学 日本文学』 | 反転するポストモダン ――阿部和重「アメリカの夜」をめぐって | 「アメリカの夜」は、ポストモダンと総括される様々な現代思想の成果を逆手に取った小説であると評されるが、そうした批評家たちの身振りこそが、ポストモダンの有り様を反転させ、読者の教養を前提としたプレモダンな重要を前景化させてしまうメカニズムを論証した。さらに、これが、一小説の問題のみならず、ポストモダンをめぐる様々な状況で考え得る視点であることを論じたもの。 | |
| 2005年7月 『立教大学 日本文学』 | 想像するリアリティと創造するアクチュアリティ ――多和田葉子「聖女伝説」論序説 | 「聖女伝説」は、その魅力にもかかわらず扱われることの非常に少ないテクストである。現実と非現実の境界をあいまいにした一人称語りのこの小説を、少女の独白を精神分析的にアプローチするという方法で、一見不条理に見えるこの小説世界の合理性を整理し、さらにこのテクストを「欲望」と「権力」をめぐる問題系と接続してみようとする試みである。 | |
| 2004年12月 『立教大学 日本文学』 | 「言葉なき歌」との対話 あるいは 開かれゆく詩人 ――中原中也における詩想の同時代性をめぐって | 中原中也の詩論からは、言葉への懐疑が伺われるが、そうした思考そのものが、じつは中原の生きていた時代の現象学的思考の地場と呼応していることを論証し、さらに中原の形式感覚が、岩野泡鳴のフランス象徴詩の翻訳と密接な関係があることを論じた。そして、その内容と形式の結実点として、「言葉なき歌」を論じた。 | |
 | 2004年5月 『日本近代文学』 | 他者の言葉で詩うこと ――昭和初期における山之口獏の文体戦略をめぐって | 詩人の人間性にまつわる言説で論じられることが多かった山之口貘という詩人の試みを、文体戦略という視点で分析することにより、この詩人を戦前の言語政策という政治的な場に接続する試みである。敬体や常体を巧みに利用した文体戦略や、さらには方言政策にまつわる詩人の言説を分析することにより、方言詩などとは違った抵抗を見出し、貘を従来とは異なった観点から再評価してみること。これは、詩研究を如何に外部と接続し得るかという課題への、新たな試みの一つでもある。 | |
 | 2004年3月 『昭和文学研究』 | スポーツ、政治、そして詩人たち ――村野四郎「近代修身」を視座に | 昭和初期においてスポーツが如何に全体主義の国策に取り込まれていったかという歴史観に対して、それを単に上からの政治的圧力の過程としてではなく、民衆の側から支えていった側面に注目する。その際に重要な示唆となるのが、昭和７年と11年の電信写真・国際電話など最新メディアを利用したオリンピックの報道合戦であり、またラジオ体操による身体統制である。そうした徐々に浸透していった身体統制に、ある詩人は強力なイデオローグとして機能し、ある詩人はモダニズムの手法により対峙しようとした。その動向を詳細に分析した。 | |
 | 2003年11月 『立教大学 日本文学』 | 他者の欲望をめぐって ――古井由吉『杳子』論 | 従来の「杳子」論は、作品の一部に対し、精神分析理論や他者論等の外在理論を恣意的に援用してきた。しかし、テクスト全体を詳細に考察すると、テクスト自体がそれらの手法を相対化してしまう点を論証し、そこに現れる客観性を装いきれなくなった諸論者のスタンスの恣意性を批評した。そして多様な読みを許容してしまい真の意味を拒否し続ける「杳子」というテクスト自体の構造を分析することにより、読みの客観性という問題についてあらためて考察したもの。 | |
 | 2003年11月 『国文学 解釈と教材の研究』 | 未刊詩篇を読むということ ――インターテクスチュアリティの可能性をめぐって | 未刊詩篇を読む可能性について、従来の様な作家の伝記的事項との往復や、刊行された作品の読解の補助的な役割に終始することなく、様々なテクスト同士の関係性を作家的時間軸の呪縛から解き放つ必要性を提唱したもの。具体的には、未刊詩篇から作家の伝記的事項を再考してみたり、よく論じられる詩篇を補助線にして未刊詩篇の読解を試みたり、さらには同時代の言説空間の中に未刊詩篇を位置づけてみたりすることにより、未刊詩篇の新たなアプローチを提唱した | |
| 2002年11月 『日本文学』 | 写真との邂逅、写真の不在、そして避けられる物語 ──村野四郎「体操詩集」をめぐって─ | 初の写真と詩集の融合の試みとして注目された「体操詩集」は、従来、序文によって村野に提唱された「詩＝主奏」という読解に強く規定されていた。そこでまずその研究の磁場を形成する特権的な言説として機能する村野自身の自作詩に対する言及、およびそれが（を）補完する言説を考察し、さらに、その着地点として、もう一つの序文で北園が言う「突発的な作品と写真の遭遇」という視点を改めて導入した。それはモダニズム芸術が、いかに非政治的に振舞おうとしても、不可避にまとってしまう政治性の問題を論じることでもある。 | |
| 2002年5月 『日本近代文学』 | 言文一致の忘れ物 ──敬体の言文一致をめぐって | アンダーソン以来の「幻想の日本語」に果たした小説の役割を重視する視点は、実は、小説の社会的役割を強調し、必要以上にその価値を補完する言説と紙一重である。言文一致の社会的意義を鑑みるならば、小説のそれ以上に、常体口語が優勢となる自然主義以前の二十年間における「ます」調を中心とする敬体口語が、教科書、児童文学に果たした役割を無視できない。さらに、言文一致の歴史を「敬体」排除の歴史として捉えてみると、内地においては「初等的な日本語」という階層性を与えられながら、外地の日本語政策においては、「同化」という名の下に「理想的な日本語」として機能していた二重性が見えてくるのである。 | |
| 2001年7月 『立教大学 日本文学』86号 | 二者択一の言語観の中で | 中原が、ダダイズムの揺籃期に得たものは、単なる既成の文法破壊といった方法ではなく、主体を明確に立てた敬体口語の使用であることを論証したものである。大正期に詩作を始めた詩人たちにとって幼年向きを意識したわけではない敬体の使用がいかに特異なことであったのか。方言の意識的使用においては賢治という大きな先例があるが、敬体の意識的使用においては、そもそも研究として着目すらされないところに、この問題の逆説的な深さがある。 | |
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2001年7月 『中原中也研究』6号 | 中原の「です・ます」調 | 明治以降の言語政策の歴史は、社会史上の出来事として文学史とは別のものとして記述され、特に詩史などは、さらに社会・政治から遠い位置に置かれていることが常であった。だが、再び詩壇に目をやると、詩壇の表現も小説、新聞、日記等の散文が実現した常体口語の画一化の歴史を正確に後追いしていることがわかる。その過程を論証し、そこに対置する形で中原の敬体詩の意義を論じた。そして社会史・政治史との接続によって見出される中原のアクチュアリティを論じた。 | |
| 2001年1月 『日本文学』50巻1号 | 同じこと と 似ていること | 沖縄の方言論争自体は今までも再三検討されてきた。しかし、それは文化対政治という図式による把握のみであった。むしろ注目すべきなのはそうした論の様相ではなく、方言の保護をいかに純粋な「文化」的運動として展開してゆこうとも、それが不可避的に政治に収斂してゆくこと、つまりその運動の理論的根拠にあった民俗学・言語学といった「学」を巡る一見客観的、中立的な言説が、我田引水に現実の政治に結びつけられてしまう過程なのである。本論は、方言論争を昭和１５年の新聞、雑誌の記事の分析を通じて、その様な過程の実践としてとらえしてみた。 | |
| 2000年1月 『立教大学 日本文学』83号 | 失われた可能性 | 従来、論理性に欠けるとか、一貫した思想性がないなどといった評価をされてきた中原の詩論に、外界に対する現象学的なアプローチ方法が一貫して見られることを指摘し、その仮説の証左として「朝の歌」を分析している。この詩を、「眠」と「覚醒」の狭間に、知覚的刺激によって喚起された漠然としたイメージが、自己の「失われた過去」であると客体的に再認識される過程として捉えることは、現象学的思考という同時代性をも視野に入れた新しい中原の詩業の出発点を語ることにもなるはずである。また、詩語の「軍楽」という語をめぐって当時の軍楽隊緊縮政策の是非をめぐっての新聞報道のあり方との接点で考察してみた。 | |
| 1999年1月 『立教大学 日本文学』81号 | 詩の音楽性について | クラーゲス、ランガー、ジョン・ロックなどのリズムの研究を視野にいれつつ、音楽性豊かな詩人であると評価される中原中也を題材として、従来指摘されることのない詩の音楽性の新たな側面を抽出しようとする試みである。詩の「音楽性」という問題をリズムの問題として焦点化し、リズムの主要素をあるパターンの反復とみることにより、詩語の位置の織りなす反復、想起される意味の織りなす反復など、音以外に繰り返される要素を幾つも指摘し、意味論的なリズム論を考察してみた。 | |
| 1998年1月 『立教大学 日本文学』79号 | 「述志」の詩集『山羊の歌』 | 詩集『山羊の歌』の構成意識を探り、中原の詩的出発点を詩篇「春の日の夕暮」に見出したもの。この詩は単に詩集の最初に位置しているのみならず「述志」という詩集全体のテーマとも重なり、さらにこの『山羊の歌』は「夕暮」から「夕方」に向かうという円環構造をしている。そして「夕」を示す語には、この詩集において「朝」よりも重要な意味を持ちそれは「出発」のイメージであることなどを根拠とし、従来の固定化しつつあった論争そのものの再考を提言した。 | |
 | 1997年9月 『国語科通信』99号 | 再考、中原中也の詩的出発論争 | 中原中也の詩的出発点の問題については、フランス象徴詩との出会いが、ダダイズムの揺籃期からの脱出を促し、詩編「朝の歌」によって確立したと考えられるのが通例であるが、その主たる根拠は中原自らが記した「詩的履歴書」という文章であった。本論は、その「履歴」的信憑性を実証的に再検討し、さらに処女詩集の中で初期詩篇の一篇としての扱いしか受けていない「朝の歌」を出発点と考える従来の研究に異を唱えたものである。 |
| 掲載誌 | 年月 | 論題 | 内容 | |
 | 2013年11月 『日本文学』 第62集11号 日本文学協会 | 堤玄太著『萩原朔太郎「意思」への覚醒』 | ○○○○ | |
 | 2013年6月 『リポート笠間』 第54号 笠間書院 | 学界時評【近現代】2012.7-2012.12 | ○○○○ | |
 | 2013年3月 『昭和文学研究』 第66号 昭和文学会 | 【研究展望】デジタルとして「よみ」「かき」「のこす」こと | ○○○○ | |
 | 2012年12月 『リポート笠間』 第53号 笠間書院 | 学界時評【近現代】2012.1-2012.6 | ○○○○ | |
 | 2012年5月 『日本文学』 第61集5号 日本文学協会 | 権田浩美著『空の歌 中原中也と富永太郎の現代性』 | ○○○○ | |
 | 2011年11月 『日本近代文学』 第85集 日本近代文学会 | 長沼光彦著『中原中也の時代』 | ○○○○ | |
 | 2010年9月 『日本文学』 第59集9号 日本文学協会 | 加藤邦彦著『中原中也と詩の近代』 | ○○○○ | |
 | 2006年5月 『日本近代文学 74号』 | 前衛研究の保守性が覆い隠すもの ――展望欄 アヴァンギャルド研究の現在 | アヴァンギャルド研究の現状について、特に状況分析や作家資料の調査に拘泥してしまい、作品自体を「読む」という研究が疎かになっている状況に自戒の念も含めて警鐘を鳴らした。 | |
 | 2006年3月 『昭和文学研究』 第52集』 | 波潟剛著『越境のアヴァンギャルド』 | ○○○○ | |
| 2008年12月 『立教大学日本文学』 第101集』 | 安智史『萩原朔太郎というメディア－ひき裂かれる近代／詩人』 | ○○○○ | |
| 1996年3月 『立教大学日本文学』 第76集』 | 堀江信男著『高村光太郎論』 | ○○○○ |
| 掲載誌 | 年月 | 論題 | 場所 | |||||||||||||||||||||||||||||||
 | 2013年9月14日 中原中也の会 第18回大会 | テーマ １９３０年代と中原中也 | 山口・湯田温泉（ホテルニュータナカ）パネリスト：高橋 世織、疋田 雅昭 司会：青木 健 | |||||||||||||||||||||||||||||||
 | 2012年12月2日 日本文学協会 第67回大会 | テーマ 書物とリテラシー | 渋谷（國學院大學） 小峯 和明（立教大学）「説草からみる書物の宇宙」、高木 元（千葉大学）「書物のリテラシー」、松浦 寿輝（作家・詩人）「言葉を手渡す」 | |||||||||||||||||||||||||||||||
| 2012年5月19日 中原中也の会 第16回 研究集会 | テーマ 富永太郎と中原中也、ふたつの可能性 | 横浜（神奈川近代文学館）パネリスト：青木健、権田浩美 司会：疋田雅昭 | |||||||||||||||||||||||||||||||
| 2010年6月26日| 特集 アウトサイダーの〈道化／ファルス〉 | ――中原中也と坂口安吾 駒場（日本近代文学館） パネリスト：権田浩美、疋田雅昭 司会：中原豊
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| 2008年5月10日 | 昭和文学会 第42回研究集会 中原中也の回 第12回研究集会 特集 中原中也への新たなまなざし | 駒沢女史大學 講演 福島 泰樹「中原中也と戦争」、シンポジウム モダニズムと中原中也、澤 正 宏「中原中也とダダイズム」、中原 豊「中原中也における「近代モダン」、米村みゆき「中也からのまなざし／中也へのまなざし」
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| 2007年6月10日 | 昭和文学会 春季大会 特集 折口信夫 | 渋谷（國學院大學） 特集 折口信夫、須藤宏明「語情調がもたらした『水中の友』 ――生活の実験――」、林浩平「折口信夫と京極派和歌 ――『言語情調論』の詩学と浄土教的心性――」、講演 安藤礼二「折口信夫の言語論――『言語情調論』の起源とその可能性――」、松浦寿輝「折口信夫と近代」
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| 2007年5月27日 | 日本近代文学会 春季大会 シンポジウム 再生産される作家イメージとその強度 | 吉祥寺（成蹊大學） シンポジウム 再生産される作家イメージとその強度 関礼子「〈作家〉像の構築過程――緑雨校訂・一葉「棹の雫」の周辺――」、佐藤泉「反権威言説の現代的配置」、安藤宏「表現機構としての"作者"」、佐藤秀明「『仮面の告白』の「虚構」」 |
| 2005年10月 | 日本近代文学会 秋季大会 声と音楽の逆説 | ――中也詩のリズムをめぐって―― 渋谷（國學院大學） 特集 声をよむ、文字をきく 押野武志「声と文字の抗争史」、疋田雅昭「「声」と「音楽」の逆説――中也詩のリズムをめぐって――」、石井直人「声へのとらわれ、文へのあこがれ――「未明伝統批判」の再検討――」、楠かつのり「聴覚に直接に訴える声の場の創出」（司会）堤玄太・宮川健郎 |
| 2004年6月12日 | 昭和文学会 春季大会 詩とアヴァンギャルド芸術 | ――文学と美術の接点をめぐって―― 神保町（日本大學） シンポジウム 高橋世織、安智史、吉増剛造 講演 五十殿利治。
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| 1998年7月 | 立教大学 日本文学会 詩の音楽性について | 池袋（立教大学） |
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